現在、学術雑誌ほど大量にウェブで流通し、かつ活用されている出版物はないと考えています。
学術雑誌は研究者が最新の研究情報を得るツールであると同時に、研究成果を発表する場でもあります。
学術雑誌を中心とする学術情報は巨大なエコシステムとなっていますが、そのエコシステムの中心となっているのが長い年月を経て確立した学術論文のスタイルであり、そのスタイルを支えているXMLです。
XMLはウェブの表示に用いられるHTMLの「いとこ」くらいにあたる、いわゆるマークアップ言語のひとつです。
マークアップ言語は <
b>
学術雑誌<
/b>
のように書き、 < >
を開始タグ、 <
/ >
を終了タグと呼び、HTMLの場合 <
b>
は太字 (bold) を意味するため、この例ではタグに挟まれた「学術雑誌」は「学術雑誌」のように太字となります。
XMLではタグ名 (この例では “b”) の付け方は自由なので、<太字>
というタグを定義してもかまわないです。
しかしそれでは混乱を招くので、学術論文に特化したタグセットを定義したのがJATS (Journal Article Tag Suite) であります。
学術論文には、タイトル、著者名・所属機関名などの書誌的項目に加えて、本文中には章・節の見出し、図表・写真、参照文献へのリンク、注など、さまざまな項目があります。
これらそれぞれを <
surname>
山田<
/surname>
のように正確に記述する (タグを付ける) ことにより、印刷の際も適切なスタイルで印刷できるし、ウェブでも読みやすく表示できます。JATS XMLはこのタグ付けのための文法です。
JATS XMLは科学技術振興機構のJ-STAGEで採用されている他、世界中の学術雑誌出版社で利用されています。
現在では和文論文もJATS XMLでタグ付けできるので非常に便利になりました。
今後とも利用が拡大すると予想されています。