学術情報XML推進協議会の設立について
学術情報が紙から電子へと急速にその流通媒体を変化させている。すでに英文の理系誌は100%オンラインジャーナル化されていると考えられるほど普及は急である。この中にあって、重要なのがXMLによる情報流通であることは、論を待たない。電子ジャーナルのディスプレイ画面も、紙媒体も共通のデータの上に実現するこの技術は今、学術印刷において必須の技術といってよい。XMLを採用することにより、
- 1.論文データが構造化され、電子ジャーナルにおけるプレゼンテーションの高度化が実現する
- 2.リンクやセマンティック・タグの付与、図表など論文要素単位の配信、など加工・付加価値化が図れる
- 3.メタデータの交換、アーカイブなど、標準化による流通促進がおこなわれるなどの利点が得られる。
ただ、日本では今までXMLの利用は、理系英文誌などごく一部に限られてきた。日本語によるXML組版は、ツールやDTDが不備なこともあり、まだほとんど手がつけられていない。そのため、日本の学術情報流通はいまだに紙を前提としており、電子ジャーナルもPDFによるなど、紙媒体ありきの状態は変わっていない。このことは、国際的な学術情報流通における日本の国際的地位の低下を呼ぶこととなり、その結果として、多くの著名な日本の学会が海外出版社へと情報流通を委託するような事態を招来している。これでは日本からの情報発信が大きく損なわれ、長期的には日本の学術振興に悪影響を及ぼすことさえ考えられる。
おりしも、J-STAGEはそのVersion3でファイルの全面XML化を打ち出しており、JATS1.0が日本語も含めた多言語対応をするなど、機は熟しつつある。われわれはこうした事態に鑑み、あらゆるステークホルダーを結集して、学術情報におけるXMLの推進を図るべきことを訴えるものである。XMLへの対応は焦眉の急である。何が、XMLの普及の障害となっているか、何をもってすればXMLが普及しうるのかわれわれはそれを問い、こうした障害をひとつひとつ取りのぞいていきたい。
以上の視点に鑑み、ここに広く、学術情報のXML化のための推進協議会の設立をよびかけるものである。この協議会では広く関係者の意見を結集し、出版社や印刷会社へのサポートを行うとともに、公的機関への働きかけを計画している。また、日本語XMLの規格やガイドライン策定についても支援する。趣旨に賛同される関係各位の参加とご支援をお願いするものである。
呼びかけ人 (50 音順)
小宮山 恒敏 | 小宮山印刷工業株式会社 |
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時実 象一 | 愛知大学 代表 |
中西 秀彦 | 中西印刷株式会社 事務局 |
橋本 勝美 | 日本疫学会 |
林 和弘 | |
宮川 謹至 | 科学技術振興機構 |